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競争心を煽る組織マネジメントの限界について

昨今、国内外での人事戦略のニーズが急激に伸びていきました。と、同時に、「学習する組織」、「エンゲージメント」、「ティール組織」など、組織やマネジメントのあり方について、新しい方向性を示す考え方や手法が数多く現れてきています。
それらを個別にみていくと、一時の流行なのか、過去に既に実施したことなのか、もしくは本質的なことなのか、有象無象あるかと思いますが、こうした「組織やマネジメントの変化」は、「時代環境」と「働く人々の意識の変化」と同じ大きな潮流の中で変化していくものだと考えています。

そこで、今回は、一昔前の「競争心によるマネジメント」について考えてみました。

従来のピラミッド型組織の限界

これまでの日本は、成長し続けられるという成長神話のもと、多くの企業がひたすら拡大思考というスタンスをとるのが普通だったように思います。膨張とも言えるかもしれません。

そこでは、成長するためには競争に勝つことが大切とされ、企業の目的は「利益を上げること」が信念のようになっていたのです。ゴーイングコンサーンであるから当然です。

したがって、成長に適した、生産性にフォーカスした組織構造が重視されていたわけです。
その代表的な形態が「ピラミッド型組織」です。ピラミッド型組織は、上からの指示・命令を効率的・効果的に伝えるのに適した組織と言えます。つまりは「管理」です。

トップダウンで決まる戦略や生産目標→その戦略を実行する効率的な分業体制→給料というアメと、ノルマや罰則というムチで管理する

つまりは、仕事を標準化し、誰がやっても同じクオリティーで安定的に生産性を最大化することが目的でした。

そういった状況では「人間をモノとして見る」がマネジメントの土台の考え方となっていました。メンバーは資本家であるトップの戦略を実現するための道具にしか過ぎず、
上の人間が考えたことを、そのまま実行すれば、高いパフォーマンスを出すことができると考えられていました。

そこで起きることは、「言われたことを言われたとおりにやることが求めらる」ことになります。というよりも「言われたことをそのままやりさえすればいい」といった感じでしょうか。だからこそ、何より同調を求められ、異分子なんてものがいたら排除しますし、さらに、もっと早く・もっと猛烈に動いていただきたいため、競争意識をあおることと、危機感と緊張感を与えることで統制していきました。新卒の一括採用も競争意識を加熱させる効果かと思います。同期の給料と同期の昇進が何より響くでしょう。

そこでは、「モノ」が主役であり、金銭的な報酬で人のモチベーションを維持しようとし、営業の成果表彰もそのことをカモフラージュしてきた巧妙な施策ともいえるかと思います。組織は、1人ひとりをパフォーマンスをあげるためのモノとして捉え、一方個人は、企業・組織を基本的欲求(食べていくために)を実現するための手段と捉えていました。
つまり組織と個人は分離した状態にありました。これにより、苦しんだ方がも多いのではないでしょうか?

内発的エネルギーによって駆動される現代の組織

しかし、これらは、変化のスピードも遅く、ビジネスサイクルも長い時代環境だったからこそ成り立ったものだと考えています。

最近は言うまでもないですが、VUCAと叫ばれている通り、ビジネスサイクルも短縮化され、知識の更新スピードもドッグイヤーと呼ばれるほど年々速くなっています。そうした中では、企業、組織、マネジメントのあり方も大きな変革を迫られています。

そこで、注目され始めてきたのが、「創造型組織」です。分散型組織ですね。

管理型のピラミッド型組織が、インセンティブや競争心で運営する組織ならば、創造型組織は、「内発的なエネルギー」によって駆動されます。なので、この内発的動機の強さが人によって差異があるので、アウトプットされる成果物にばらつきがあることも特徴かと思います。また、それはその日の調子によって、個人にも差が出てくるでしょう。
ただ、やはり注目したいのは、この内発的なエネルギーによって、インスピレーションを与え合い、お互い刺激し合う。そんな自律した人材同士が行う、想像もしえないようなコラボが生まれる可能です。

したがって、価値そのものは、「内発的動機付けがされた人そのもの」になります。

企業における組織やマネジメントのあり方も、人をモノではなく、人間そのものの価値を基盤としたものに変革していく必要が今の時代だからそあるように思います。