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社員がキャリア自律的になると、離職率が高まるのか?

2021.07.14

記事の著者

黒澤 伶

株式会社ITSUDATSU/代表取締役CEO

早稲田大学卒。デル株式会社(現:デル・テクノロジーズ株式会社)、株式会社ビズリーチ(現:ビジョナル株式会社)、コーチングファーム取締役を経て、株式会社ITSUDATSUを創業。複数企業にて取締役CHROを歴任し、人的資本領域から企業価値を向上させる変革支援が専門領域。ISO30414リードコンサルタント/アセッサーとして、人的資本の可視化と企業価値への転換に特化。これまでに支援したクライアント企業を、HR系の著名アワードへ入賞に導いた実績も多数。IR領域とHR領域を架橋し、「人的資本から企業価値をプロデュースする」統合的なブランディング・投資家との信頼形成や時価総額向上を支援。

この記事でわかること

  • キャリア自律とは自分で自分をコントロールし、主体的にキャリア選択や能力開発を行うこと。企業は「人材を育成しても辞めてしまう」(43.8%)という不安から、キャリア自律支援に本腰を入れられていない
  • 組織視点のキャリア自律は「組織内での主体性発揮」、個人視点は「社会での市場価値向上」と定義が異なる。この利益相反の解釈が「キャリア自律=離職」という誤解を生んでいる
  • キャリア自律人材が離職しない鍵は「仕事という報酬」の提供。成長機会・挑戦的な仕事があれば定着する。人事部門には挙手文化の醸成、社内キャリア機会の可視化、社内公募制度などの仕組みづくりが必要

昨今話題のキャリア自律

昨今、「キャリア自律」という語句が経営者や人事担当者の間でものすごい勢いで広がるようになりました。

「キャリア自律」とは、自ら主体的に、自分の価値観を理解し、なぜ私はこの会社にいるのかに納得感をもち、仕事の意味を見出し、キャリアの目標と計画を描き、現在や将来の社会のニーズや変化を捉え、主体的に周囲の資源などを活用しながら学び続け、不断にキャリア開発すること、と定義されています。

ジョブ型雇用もコロナを契機に広がりつつあり、終身雇用と年功序列をベースとした日本企業の雇用慣行が大きく崩れようとしています。
その中、エンプロイアビリティ(社員の雇用されうる能力・労働市場で通用する能力)が強調されるようになり、社員は会社に依存するのではなく,自己責任において自律的にキャリアを形成するキャリア自律が求められるような時代になりました。

多くの企業は副業・複業を解禁しているのも、「会社はもう社員を永続的に雇い続けることなど不可能だ」という豊田社長の言葉の通り、キャリアに自己責任という考えも求められている流れかと思います。

しかしながら、日本の大企業の正社員は、給与も高く、働く上での物理的衛生環境は整っていることが多いため、離職率は低く、「会社の言う通りにしていれば、安心」と思って、キャリアについて意識し、考える機会を持たない人もいまだまだ少なくないと思います。
会社主導の人事育成システムが過保護すぎて、依存体質の社員が増えれば、組織全体にいい影響を与えないことは言うまでもありません。

今はイノベーションのために個人の創意工夫や、個人個人の強い内発的動機づけが企業の業績に大きなインパクトを与える時代になりました。
YESマンのように、育成された社員に「やらされ感」が蔓延している組織にはイノベーションは起こせません。一人ひとりの持つ、内発的動機とその内発的動機を成し遂げるための、組織のハコとしてのリソースが良いシナジーを起こす、人事戦略が求められるようにもなったかと思います。

このような中で、社員の自律的キャリア形成を支援するために、キャリア研修やキャリアカウンセリングなどの施策を導入する企業も増えてきています。

しかしながら、キャリア自律支援が企業の競争力を高めることに果たして繋がるのか?
効果があるのか?という疑問や、さら にキャリア自律は、自らの自己実現のみを追求し、 組織に対するコミットメントの低い人材を増加させ、人材流出の危険性を高めるのではないか?というネガティブな見方も存在しています。

人材育成上の問題を抱えている企業のうち、43.8%が「人材を育成しても辞めてしまう」ことを問題点として挙げています(※「キャリア自律」意識の国別比較により引用)

出所:リクルートワークス研究所「五カ国マネジャー調査」

キャリア自律が高まると離職率が高まるのか

そこで、考察してみたいのが、人材投資として社員のキャリア自律を促すと「辞めてしまう」という”肌感覚”は正しいものなのだろうか?と言う点です。

まず、「キャリア自律」について考える前に、「自律」について考えてみたいと思います。
「律する」は、英語に置き換えると「コントロール」あるいは「マネジメント」になろうかと思います。つまり、自分で自分のことをコントロールしていくこと、さらに言うと自由自在に自分を動かすことができる、と私は捉えています。

このキャリアに関することなので、
・私は今こんなことを大事にしていて、将来はこんなキャリアを考えている
・そのキャリアを描くためには、今自分が向き合ったほうがいいテーマはこんなことだろう
・だからこそ、私は職場でこんな行動をとってみたいし、毎日こんなことを習慣にしてみよう
・自ら発想して、自ら行動したことなので、責任を持って成し遂げよう

と、
①自己概念の明確さ
②主体的人生形成意欲
③自己責任自覚
④職業的自己効力感
この4つで主に形成されると考えています。

さて、こんな方が離職率が高まりそうでしょうか・・・?

自己認識が明確にできており、自らキャリア(人生)を切り拓こうとする意欲が高い方は、会社にどう貢献し、会社でどう成長するかを明確にできている人材でもあります。こういった人材は、不足している能力や協調行動は入社後研修で補完できるので、企業活動に貢献する確率も同時に高いです。

また退社するとしても予測可能、かつ在社期間を通してアンダーパフォーマーになる確率も低いことがわかっています。

こういったキャリア自律人材が重視するのは、以下の3点かと思います。

①企業が自分自身のキャリアに関して、どこまで理解してくれるか?
②さらに理解してくれた上で、業務目標を設定できるか?
③成長意欲を理解してくれた上で、自己成長の機会を与えてくれるか?

しかし、離職率が一見高まると考えられるのは、上記の3点が企業側が提供できていないことが大半のように思います。

伝統的キャリアから自律的キャリアへ

キャリアは従来の組織主導の伝統的キャリアから個人主導の自律的キャリア(新しいキャリア)に変容しつつあります。以前は組織は長期的な雇用の保障ができ、個人を家族のように扱うことができました。
そこで形成された伝統的キャリアは、個人は組織に囲われていたため(保護されていたため)、キャリアにおける成功の尺度は報酬や組織内の地位といった客観的なものでした。

しかしながら、昨今の時代スピードの速さ言わずもがなですが、伝統的キャリアの有効性がどんどん失われ、個人主導自律的キャリアが注目されるようになりました。
外因的仕事満足から内因的満足への転換です。外因的仕事満足とは、昇進や報酬など、個人の外にモノサシがある満足です。しかし最近はそれが機能しなくなって、やりがいや成長など、個人の内にモノサシがある内因的仕事満足へ移ってきています。内因ですから、自律は必須です
高橋 俊介氏(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授)

上記、高橋教授の引用させていただきましたが、目に見えやすい外因的・物理的な成果よりも、目には見えないし、定量的にも測れない、定性的成果への充実度が重要視されています。

こういった時流をつかみながら、組織戦略・人事戦略を考えることが喫緊の課題になっているかと思います。

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